updated 2013 05/17

JAZZ COMMENT 79


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   1 また随分と時が経ってしまった・・・
   2 Cから始まる・・・


1 また随分と時が経ってしまった・・・

SERENADE IN BLUE / PAULA SHOCRON (RIVORECORDS: RR11) 2012
Players: Paula Shocron(p), Juan Manuel Bayon(b), Eloy Michelini(dr),
Tunes: Jeannie, Afternoon in Paris, Nica’s Dream, Serenade in Blue, Fine and Dandy, SP, My Ideal, Willow Grove, The Star-Crossed Lovers,
Duke Pearson”Jeannie”は大好きな曲であるうえに、こうして淡々とそして黙々と派手さのないテンポで演奏する以外に的確な演奏方法はないと思っているので、1曲目にこれを持ってこられると引き込まれざるをえない。この曲から、レコードならA面にあたるであろう、”Serenade in Blue”までが実に気持ちよく流れ聴くことができます。唯一のオリジナル曲の”SP”は、ピアノのダイナミズムを味わうことができる演奏になっています。イニシャルを逆さにしたタイトルから穿ってみれば、これがもしかしたら彼女の本質なのかもしれませんが、通して聴けば若干違和感がなくもなく、置くのであれば、”Willow Grove”の後、ソロ演奏のラスト前で流れた方が良かったような気が個人的にはします(前回はオリジナルがなかったのですが)。全体としては聴きやすく耳に馴染むピアノトリオとして好印象。ベースとドラムも、懐かしささえ覚えるモダンな録音と演奏ラインで、雰囲気を高めていると思う。アルゼンチンのCMを結構楽しく観ることが多いのですが、地球の裏側から届いたジャズの贈り物もまたとても楽しく聴くことが出来ました。

UP A STEP / CORY WEEDS (CELLARLIVE: CL102811) 2012
Players: Cory Weeds(ts), Mike LeDonne(org), Oliver Gannon(g), Jesse Cahill(dr),
Tunes: A Db of This and That, Up Over and Out, Bossa for Baby, Baptist Beat, Up a Step, I See Your Face before Me, Straight No Filter, Perfectly Hank,
Cellar Liveの主催者であるCory Weeds自らの新作(最新ではなくなってしまった)。最近、自レーベルから立て続けに出している印象がありますが、まあオーナーの特権を生かしまくっているのでしょうか。彼はアルトでもかなり良い演奏を聴かせてくれますが、ここではテナーを。本作はHank Mobleyトリビュートで、どの曲を聴こうが、ファンキーな雰囲気が醸し出されていて、気分はヴァンクーヴァーではなく、ニューヨークの夜。メンバーは、もうピアノを弾くのを忘れてしまったのではないかと思うほど、ほとんどオルガニストとして演奏することの多いMike LeDonne。また、懐かしいOliver Cannonがギターで参加していて、本作には彼のギターの選択が欠かせなかったと思います。Fraser MacFersonCDで馴染みのある名前というか、僕にとっては、Ed Bickertと並びカナダを代表するギタリストという認識です。ギター演奏はそのシンプルなフレーズやトーンなど全くもって変わりない演奏で驚くかぎり。ライブ会場に居たかった。

SHADOW OF ELVI / GLOSTRUP TRIOEN (STORYVILLE: 1014270) 2010
Players: Torben Kjær(p), Henrik Dhyrbye(b), Ole Streenberg(dr),
Tunes: Autumn Leaves, It Might as well Be Spring, Softly as in a Morning Sunrise, Detour Ahead, It Could Happen to You, I’m Glad There Is You, Dein Ist Mein Ganzes Herz, I Cant Get Started, On a Green Dolphin Street, I Fall in Love too easily,
12歳の時に出会ったジャズ好き三人による、50年アニヴァーサリー録音。ネット上に、ある大学生たちが何十年にもわたって毎年同じ場所で同じ構図で写真を撮り続けている、その写真が載っていたのを観たことがありますが、本CDのライナーにもおそらくほぼ同じ場所で撮られたと思しき三人の、演奏を始めたばかりの頃の写真と近影が載せられていて、わけもわからず「いいなぁ」と思ってしまった。さて、演奏はといえば、怪しいジャケットからは想像できない、きわめてオーソドックスなピアノトリオですから、安心して下さい。彼らがジャズに目覚め演奏を始めた頃、コペンハーゲンのジャズ界は、世界中のジャズマンたちが集って演奏が繰り広げられていました。そんな恵まれた環境で演奏を見聴きしていた三人によって演奏されている曲目は、ライナーに記されているように、そんな彼らが親しんできた曲が並べられています。1曲だけ”I’m Glad  There Is You”でヴォーカルが入ります。因みに、”Dein Ist Mein Ganzes Herz””Yours Is My Heart Alone”です。

FORSE / ITALSTANDARDS JAZZ TRIO (JAZZMUD: JAzZMUD002) 2012
Players: Alessandro Galati(p), Ares Tavolazzi(b), Piero Borri(dr),
Tunes: When We Were in Italy, Tuca Tuca, Non Dimenticar le Mie Parole, Una Lunga Storia D’amore, Spaghetti a Detroit, Forse, Roma non far la Stupida, Le Donne Belle, Tu si na Cosa Grande, Sono Stanco,

ジャケットはこれでいいのでしょうか。Alessandro GalatiHPのディスコにある本CDのジャケ写は別物で、モノクロのそちらも良さげですが、こちらの水彩タッチの絵のジャケットも気分で、実はほぼジャケ買いだったわけですが・・・。えAlessandro Galatiですが、このCDではイタリアのポップスをジャズ化しているようです。あちらのポップス界には詳しくないので、作曲者のクレジットを見てもトロヴァヨーリぐらいしか判然とせず、どこがどう換骨奪胎されているのか、どう料理されているかわからないのが残念ではあります。しかし、ある意味オリジナルとして聴こうという潔さで構えれば、出だしの”When We Were in Italy”のキャッチーな主題曲に簡単に乗っていけます。硬質で小粒に粒立った明確なタッチのフレーズに身をまかせると、山あり谷あり、ちょっとしたつづらおりありで、うっかりしていると、いつの間にか終点になっている、というのは大袈裟にしても、元テーマを知らなくても、彼のピアノ・トリオ自体で聴かせているわけですから、さすがにたいしたものです。


JAZZ AT PRAGUE CASTLE 2012 / ONDŘEJ PIVEC N. Y. TRIO featuring PAUL BOLLENBACK, J.H. (MULTISONIC: 31 0842-2) 2012
Players: Ondřej Pivec(org), Jason Marshall(bs), Russell Carter(dr), Paul Bollenback J.H.(g),
Tunes: Man from Toledo, Ready ‘N Able, Song for Sam, Road Song, Back at the Chicken Shack, Lonely Grey, Church Medley, Cherokee, Humble Groove,
今回2度目のオルガン登場。久しぶりのOndřej Pivecです。彼は現在、その活動の拠点はNYCのようで、たまにチェコに戻って演奏もしているようですが、これは出身地チェコのプラハで行われたコンサートのライブ音源で、冒頭、何と!チェコ大統領(当時)の挨拶があります。ただしチェコ語です、たぶん。Paul Bollenbackをゲストに迎えて、 George Benson1曲目から快調に飛ばしていきます。そんなに重そうには聞こえないJason Marshallの溌剌としたバリトン、ゲストという脇役であることをわきまえている抑制の効いたギターで逆に強い印象を与えるPaul Bollenback、全くもって手堅く的確なドラムを叩いているRussell Carterによる、いずれの演奏も聴いて楽しむには抜群の出来になっていると思う。流れるようなオルガンを弾くOndřej Pivecは多方面に活躍の場を広げていっているようですが、例えばNYCでは教会のオルガニストとして礼拝日にはどこかの教会でオルガンを奏でているらしい。その成果がChurch Medleyというわけで、そういわれれば彼のオルガンにはそこかしこにその影響があるような、ないような気がしませんか。

ACCIDENTAL TOURISTS / THE L.A.SESSIONS (CHALLENGE: CR73332) 2012
Players: Markus Burger(p), Bob Magnusson(b), Joe LaBarbera(dr),
Tunes: Grolnicks, Air Canada, Black Sea Pearl, Full Circle, I Love You Porgy, Rodeo Drive Hustler, In Love in Vain, Inspektor Bauton, The Old Country, Blue in Green, One World, Morning Smile,
何とも美しい色彩の、LAっぽいジャケット写真がそそる。しかし、LA Sessionsとは言いながら、LAの臭いも佇まいも何も感じることのない、実にヨーロッパ的な音感と雰囲気が横溢する不思議なタイトルのアルバム。1曲目から4曲目までオリジナル曲が続き、あるモチーフが繰り返されるがごとく、美しいとはいえやや食傷気味になったところで、ストレートに繰り出される、ガーシュインのメロディにやられる。それに続く”Rodeo Drive Hustler”も、短いとはいえ実にスリリングに展開する。久しく聴くことがなかったガッツリしたBob Magnussonのベース、やる気満々の創造性溢れるジョーさんのドラム捌きは聴き物だと言える。その後に引き続く”In Love In Vain”の美しさが際立つ。ややフリーな展開から入り込む”The Old Country”からお馴染みの”Blue in Green”では変化球を投げ込んできますが、全体的流れは変わらず、ワルツが気持ち良い2曲で幕を閉じる音楽世界はリラックスして聴き応えがある。


2 Cから始まる・・・

アルファベット一巡して、また同じような回転も芸がないので、Aから始まる楽曲で「これが好きです」といったものを順番に・・・

C-1
SPIKE / ERMINIO CELLA TRIO (PHILOLOGY: W 110.2) 1995
Players: Erminio Cella(p), Marco Mistrangelo(b), Gabriele Boria(dr),
Tunes: Spike, Dolphin Dance, Blues for Giulia, Blues for My Wife, What Is This Thing Called Love, Chelsea Bridge, Bop Be, Indecisione, Song for My Wife(alt.),
[Chelsea Bridge]: Billy Strayhornの書いた名曲の1つで、Duke Ellingtonのバンドではテナーがフューチャーされるフォームが多かったように思う。この曲に限らず、ミディアム・スローで演奏されるStrayhornの曲は、”After All”、”Blood Count”にはじまり、下っては“The Star-Crossed Lovers”などいくつもありますが、そのいずれもが「美しい」と凡庸な言葉しか出てこないような惚れ惚れするメロディ・ラインを描き、そのイマジネーションの無限さに呆れ返るしかない。そして、何の衒いもなくストレートに弾いてくれる演奏に、何をおいても惹きつけられる。それはやはりそのメロディの力強さに因るのだろうと思う。というわけで、ここではゆったりとストレートにテーマを紡いでいるErminio Cellaのトリオによる大好きな演奏をあげておきます。
C-2
SIDE TRACK / LOUIE BELLSON (CONCORD: CJ-141) 1981
Players: Louie Bellson(dr), Frank Collett(p), John Heard(b), Don Menza(ts,fl), Sam Noto(tp), Walfredo de Los Reyes(per),
Tunes: Side Track, Don’t you Know I Care(or Don’t You Care to Know) ~ You Don’t Know Me ~ Polka Dots and Moonbeams, Caravan, Fat’s Blues, Cinderella’s Waltz, Out of Nowhere, I See You,
[Cinderella's Waltz]: Don Menzaのペンになるこの曲は、彼が在籍したLouie BellsonのBig Bandでも、自己名義のバンドでもその演奏はいくつか録音が残されています。Louie BellsonのBig Bandでの作曲者のペンになるオーケストレーションがとても良い演奏は既出なので、ここでは、コンボ演奏から、アルバム全体の録音レンジが好きで、収録されている曲がどれも素晴らしい、Louie BellsonがリーダーのCD演奏をあげておきたいと思います(この頃のCONCORDの録音が僕は大好きなので)。Big Bandでの演奏では作曲者はソロをとらず、ここでもピアノを弾いているFrank CollettとトランペットのBobby Shewがソロイストだったのですが、ここではFrank Collett、Sam Notoのソロ、そして悠然とテナーを吹いている作曲者Don Menzaのソロを聴くことが出来ます。

C-2
SOUVENIR / BILL CHARLAP TRIO (CRISS CROSS: CRISS 1108 CD) 1995
Players: Bill Charlap(p), Scott Colley(b), Dennis Mackrel(dr),
Tunes: Turnaround, Half Step, Souvenir, Waltz New, Confirmation, Godchild, Alone Together, Goodbye Mr. Evans
[Confirmation]: “Confirmation”はこれまでMJQのLast Concertの演奏が最高だと公言してきたに関わらず、だからこそ、ここではBill Charlapの演奏をあげています。この曲の演奏は、(1)テーマをまともに提示する演奏、(2)テーマを崩して提示する演奏に分けることができると思います(ジャズの場合どの演奏もそうだといえますが)。”Eclypso”でのTommy Flanaganや”Daddy Plays the Horn”でのDexter Gordonは(1)、Miles Blackの”Some Enchanted Evenig”や全く違う曲としか聞こえないのに”Confirmarion”だとクレジットされているGil Cuppiniの”What’s New Vol. 2”での演奏は(2)ということになるでしょうか。ではBill Charlap Trioの”Confirmarion”はどちらか。最初から聴けば(2)、後ろから聴くことができれば(不可能ですが)(1)ということに。 Lee Konitzの”Motion”のように、いきなりアドリブから入り、最後に一応テーマが提示されます(”Motion”よりはハッキリと)。メリハリのある彼のピアノだからこそ、この曲は填りまくっていると思う。



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