updated 2012 07/18

JAZZ COMMENT 77


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   1 この半年で・・・
   2 Bから始まる・・・


1 この半年で・・・
MESSAGE FROM ART: FOR ART BLAKEY / JOE LA BARBERA QUARTET FEATURING PAT LA BARBERA (FIVE STARS RECORDS: FSY514) 2012
Players: Joe La Barbera(dr), Pat La Barbera(ts), Don Thompson(p), Tom Warrington(b),
Tunes: Con Alma, Just One of Those Things, Evening in Paris, All or Nothing at all, Do You Know What It Means to Miss New Orleans, Tetragon, The Lamp Is Low / Theme from Ravel’s Pavane, Waltz for Debby, Message from Art / for Art Blakey,
前作以上に楽しませてもらいました。Pat La Barberaのテナーがとても豊饒に鳴っているのと、けっこうオーソドックスで悠揚たるプレイに徹しているところが、す~っと耳に入り込んでくる要因になっていると思われます。それは、一番モダンに吹いていると言える” Tetragon”であっても。Don Thompsonがピアノだということもあるのかもしれない。ここしばらくマイブームになっている” All or Nothing at all”が取り上げられているのは嬉しい。それも演奏時間は一番長いですし。” Do You Know What It Means to Miss New Orleans”は素晴らしく、デュオに始まりデュオに終わる演奏構成が雰囲気をかなり盛り上げているように感じる。裏ジャケ写真のPat La BarberaDon Thompsonを見ながら聴くと気分が出ます。” Waltz for Debby”Don Thompsonのための選曲でしょうか。途中にソロだけで登場するPat La Barberaのノンシャランな感じのサラッとしたモダンで王道を往くテナーと、リリカルな響きのピアノの対比が印象的です。メッセンジャーズの曲と「チュニジアの夜」のブリッジが合体したような、ラストのオリジナルはライブ演奏では盛り上がりそうです。ここでは、珍しくお茶目なピアノを聴くことが出来ます。

IMPROMPTA / LOU RAINONE, ROBERT WEISS, FUMI TOMITA ( : ) 2011
Players: Lou Rainone(p), Fumi Tomita(b), Robert Weiss(dr),
Tunes: If Ever I Would Leave You, Lazy Bird, Oblivion, Amanda, For Heaven’s Sake, Strollin’, Delilah, Afternoon in Paris, Sundown, Lester Left Town,
いきなり調子の良いリズムと明朗なピアノの響きに引き込まれる。クセのない流麗なタッチのピアノに、スイング感とノリの良いフレーズの合わせ技で、ちょっと名前を記憶しておこうという気になる。” Lazy Bird”は、捻っているわけでもなく、単純にこういう弾き方もあるんだなと思わせて、この曲はけっこうきれいなメロディ・ラインを持っているのだなと感心しました。それでは、ピアニスト自体は「リリカルな」と言えるのかというと、中盤に配置されるバラード・プレイもタッチの美しさもあってもちろん良質ではあるのですが、この人の持ち味はミディアム・テンポ以上にあるのではないかと思いました。前半戦、後半戦の生きの良いタッチが、バラードだから当たり前と言えばそうなんですが、中盤ではタッチにやや翳りが混在している気がして、だからこそ” Afternoon in Paris”の明朗軽快そのもののピアノが栄える。バラード曲ではベースのFumi Tomitaがメインになることが多いし・・・、でも” Sundown”は雰囲気がなかなか良いです。

WHITE ROOM / ANDREA REA TRIO ( : ) 2010
Players: Andrea Rea(p), Daniele Sorrentiono(b), Luigi Del Prete(dr), Jerry Popolo(sax)*,
Tunes: Inner Urge, White Room, Blu Sky*, A Portrait of Luisa, Something Has Changed*, Andrea's Groove, Quicksilver,
これはなかなか良い、結構良い、かなり良い。ただ、惜しむらくはベースがエレキであることです。狭いスペースのスタジオでウッドベースは、それは邪魔になるでしょうけれども、それでも・・・という気がします。ピアノとドラムの雰囲気が抜群にジャズ的なので、ピアノの後にあのエレキベースのボヨボヨと聞こえるソロに引き継がれるのはどうにも「ちょっとこれは・・・」…。YouTubeの演奏ではアコースティック・ベースを弾いている映像もあるのに、何でこれはこうなってしまったのでしょう。・・・さて、”Quicksilver”を除いてオリジナルが並んでいますが、基本はハードバップ主義なので、こちらとしては安心して聴くことが出来ました。録音のせいもあるのか、初めてAndrea Reaを聴いたときはGary Schunkが頭をよぎりました。ピアノの鍵盤の叩きに、重さを感じることがあるからかもしれません。アップテンポの曲をかなり弾けるピアニストですし、バラードでも割とリリカルなタッチを聴かせてくれます。最後の”Quicksilver”では、遊興的な演奏で楽しませる。2曲でテナーが入り、カルテット演奏になります。

REMEMBERING SHELLY / ROBERTO GATTO QUINTET (ALBORE: ALBCD 007) 2009
Players: Marco Tamburini(tp), Max Ionata(ts), Luca Mannutza(p), Giuseppe Bassi(b), Roberto Gatto(dr),
Tunes: The Breeze and I, Nightingale, C And G, Cabu, Fan Tan, The King Swings, A Gem from Tiffany,
タイトルが示唆する通り、往年の”Blackhawk”、あるいはまさに“マンズ・ホール”でのライブのよう。それぞれがR・Kamuca、C・Candoli、R・Freeman、M・Budwig、S・Manneということになるのだろうか。選曲もそれらしきものが並んでいたりする。細かいことを言えば、例えば、Max IonataのテナーはKamucaよりもゴツゴツ感というか、もっとゴリゴリ吹いているといったことはあるし、東海岸でハードバップが流行して、その影響を受けた後のウエスト・コースト事情を聴いているような気もするが、熱い?ウエスト・コースト・ジャズを聴かせてくれていて、もちろん大変満足、聴き応えは十分。こうした演奏を聴いていて思うのは、今回のAndrea Reaの作品にも言えることだが、現在のイタリアにおける、この手のジャズの豊かさである。国が混乱し破綻しそうでも、それでも芸術活動は止むことがないという、まるでルネサンス期のイタリアみたいである。ライナーでRoberto Gattoが言及してもいる”Blackhawk”の演奏(tppはメンバー替)はcomplete CDで、またYouTubeで何曲かをスタジオ・ライブで視聴することができる。続編の#2もよろしく。

ONE GOOD TURN: A TRIBUTE TO THE MUSIC STYLES OF ERROLL GARNER / THE ERNIE EDWARDS TRIO (VISION VENTURES: VV2010001) 2010
Players: Ernie Edwards(p), Jacob Webb(b), Nathan Webb(dr),
Tunes: Farewell to Paris, On the Sunny Side of the Street, Left bank Swing, One Good Turn, Paris Bounce, Mambo Carmel, That’s My Kick, From Ernie to Erroll, Mack the Knife, Thanks for the Memory,
ちょっと毛色の変わったものというのも失礼な話ですが、今更ながらエロル・ガーナー・トリビュートを一つ。ピアノのErnie Edwardsは寡聞にして初聴きです。古くはGeorge Shearing、最近ではIgnasi Terrazaと同様、盲目のピアニストとの情報を得ております。同じ姓でも、堂本二人組のように、全く関係ないと言うこともあるので、ライナーを確認すると、ベースとドラムは兄弟のようです。さて、昨今の言葉遣いのような言い方をすれば、超「ミスティ」で、また、その「ビハインド・ザ・ビート」奏法とやらで知らぬ者はいないエロル・ガーナー。ガーナーのオリジナル曲と愛奏曲、Ernie Edwardsのオリジナル1曲から成っていますが、ここに超「ミスティ」が入っていないのは残念といえば残念で、やはり入れてくれても良かったのでは。聴く前からイメージしている通りに流れてくるのを、プラスととるかマイナスととるかで評価が違ってくるかもしれません。僕はもちろん前者です。「それでいいのだ」(by 赤塚不二夫)。何か、ガーナーではなくて、山本剛のピアノが聴きたくなってきた。それはそうと、MP3販売ではCDより2曲多いというのはどういうことか?


2 Bから始まる・・・

アルファベット一巡して、また同じような回転も芸がないので、Aから始まる楽曲で「これが好きです」といったものを順番に・・・

B-1

STANDARDS / ALGUÍMIA (FRESH SOUND NEW TALENT: FSNT 049 CD) 1998

Players: Guim Garcia(as), Joan Monné(p), Alexis Cuadrado(b), David Gómez(dr),
Tunes: Bewitched, They Say It’s Wonderful, Straight Street, Solitude, Retrato em Blanco e Preto, Old Devil Moon, My Ideal, Infamia, Red Cross,
[BEWITCHED] “Bewitched”は、魅力的なメロディと切ない歌詞で、数々のミュージシャンを、そしてリスナーを虜にしてきた、ロジャース&ハートによる名曲。女性だけでなく、男性陣もよく取り上げて歌唱されていて、Boz Scaggsはとてもはまっていたと思う。名唱、名演、多々ある中、ここに取り出したるは、ヴァースもなくイントロもなく、いきなりボッサ・ビートに乗ってコーラスから軽快に入るGuim Garciaのアルトが潔く、その明朗感がそれこそ魅力的です。(Eric Alexanderが豪放磊落に吹いている(こちらはヴァースから)ものも潔いには違いないが既出なので・・・。)このCDは、”Solitude”” Infamia”がスローで、残りはミディアム以上で演奏される曲がほとんどで、この実にあっけらかんとした処理が、僕としては気に入っている。もう一つ、これはBump of Chickenの隠しトラックみたいなものなのか?よく分からないトラックがあって、パーカーの”Red Cross”CD記載の通り6分ほどで終了するのですが、それをしばらく放っておくと9分40秒あたりからいきなり、何と「オリーブの首飾り」が飛び出してくるのには、「何故?!」という言葉しか思い当たらない。これもあって、手放せない。
B-2
MAYBE IN A DREAM / JEREMY DAVENPORT (TELARC: CD-83409) 1997
Players: Jeremy Davenport(vo,tp), Diana Krall(vo)*, Glenn Patscha(p), Peter Washington(b), Gregory Hutchinson(dr),
Tunes: A Beautiful Friendship, I Thought about You, Maybe in a Dream, Let’s Leave*, Moonglow, What ever Happened?, P.S. I Love You, Spirit of St. Louis, You Are the One for Me, A Second Chance, They Didn’t Believe Me,
[Beautiful Friendship, A] 友情の終わりが恋の始まりと唄う” A Beautiful Friendship”も大好きな曲で、こちらはやや新しい1950年代の曲。”Bewitched, Bothered and Bewildered”よりはるかに自信過剰にも思えますが、これもアッケラカンとして言われてしまうとそうかもしれないという気になってくる?ザックリとした印象では、Steve DavisCarl Fontanaなどトロンボーンを吹くミュージシャンが好んで取り上げているような気がする。それがまた、この曲のメロディとトロンボーンの音色とが絶妙にマッチしているように思えるから不思議。Jeremy Davenportは、Davenportといってもアイオワ州出身でもテニス・プレイヤーでもなく、セント・ルイス出身で、現在はニュー・オリーンズを根城に活躍している。ハリー・コニックのバンドでしばらく修行していたようで、楽器でなくヴォーカルもものにしているのはその影響なのかしれない。男性ジャズ・ヴォーカリストは、ヴォーカルのみで活躍していることはほとんどなく、人員不足という事情もあり、このままずっと歌い続けてくれることを願わずにはいられない。
B-3
NORIO MAEDA & THE WEST LINERS (KING: SKA 3007) 1978
Players: Norio Maeda(p,arr), Yasuo Arakawa(b), Takeshi Inomata(dr), Sadanori Nakamure(g), Akitoshi Igarashi(as), Kohnosuke Saijyo(ts), Tadayuki Harada(bs), Tetsuo Fushimi(tp), Tadataka Nakazawa(tb), ,
Tunes: I Got Rhythm, Tenderly, What Is This Thing Called Love, Sweet Georgia Brown, Lover Man, I’ll Remember April, Shine, Love for Sale, Grand Fugue, Stella by Starlight, Bye Bye Blues,
[BYE BYE BLUES]:今までも言及していたこともある曲で、ここで出さずにどこで出すのか。KINGは1960年代から70年代制作のCD化を最近進めていますが、これまでのところNORIO MAEDA & THE WEST LINERSが入っていないのはどういう魂胆なのだろうか。たぶん次回の「C」でも出るかもしれない、NORIO MAEDA & THE WEST LINERSのもう一枚『帰結』と併せて、是非ともお願いしたい。閑話・・・。ここでは楽器のフロント・ラインはアレンジに身をまかせていて、いわばクラシックのピアノ協奏曲的体制が敷かれている。ソロ演奏は、前田憲男のピアノが、わがまま気ままに行うことが基本となっている。だからこそ、最後の”Bye Bye Blues”で、いきなりピアノ・トリオで始まり、「あれっ?」と思っていると、「えっ!?」と驚くことになる仕掛け?曲自体は1920年代に作曲された古い曲だが、レス・ポールが50年代に取り上げたことで有名になった。どちらかというと、C&Wの方でよく聴かれているかもしれない。



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