updated 2012 02/18

JAZZ COMMENT 77


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   1 この半年で・・・
   2 Aから始まる・・・


1 この半年で・・・
SIDE 2 / THIS SIDE UP (UNTRAINED DOG : UNDO_CD_82703) 2011
Players: Rich Ruttenberg(p), Joel Hamilton(b), Jerry Kalaf(dr), Bob Sheppard(ts),
Tunes: I Got It Bad and That Ain’t Good, Niki’s Waltz, Birdbrain, Not Knowing, Brooklyn Heights, She Loves You, On the Sunny Side of the Street,
一曲目から快調で、この曲のメロディをこんな風に演奏する仕方もあったんだなぁと思わず膝を打つ、というか打たざるを得ないよ(by キャプテン渡辺)。前作もそうであるように、この軽やかさ加減が持ち味なんだと思う。2曲目のワルツは決して軽やかというわけでなく、どちらか云えばもったりした3拍子なんだけれども、それでもふわっとした印象(軽薄といった意味でなく)。ベース・ソロ以降が特に良いです。あっという間に3曲目に到達していて、このピアノに、このベースで、このドラムを再認識。何か往年の11PMのテーマのような感じの軽快な曲。ここまでで一つの区切りになる。4曲目はどういうわけかシンセが使用され、だからどうしたと突っ込まざるを得ず、使いたかったんでしょうかねえ。彼らトリオの世界観が広がるとは思えないし、5曲目のカルテットへの露払いと思っておきましょう。以降は、ピアノのタッチが重くなっているし、ベースも重心が下がったような印象あり。淡々としているといえばそうなので、熱い演奏を期待している向きには果たして・・・・・。僕は大好きです。

TIME WILL TELL/ PER DANIELSSON TRIO (Random Act Records: RAR1006CD) 2011
Players: Per Danielsson(p), Richard Drexler(b), Marty Morell(dr),
Tunes: Outposted, Contrast, Yesterday’s Gardenias, Time Will Tell, My Wish, Here’s That Rainy Day, Second Chance, Song for Bill, In Your Own Sweet Way, Heart Communion, Step by Step, Old Folks,
オリジナル各曲のテーマはあまり面白く思わなかったのですが、ピアノのラインが綺麗に流れるので、といっても流されているわけでもなく、何とはなしに聴いてしまう。ピアノの右手シングルトーンの奏でが(左手もけっこう強いですが)、実に爽やかということ、どう聴いてもジャズピアノだということもあるのでしょうが、おそらくは、トリオとしてのまとまりの良さの故ではないか。ベースの音も良いし、ドラムも実に堅実で、良くも悪くも破綻がない。一番長尺で、普通は、動か静かで云えば、静寄りで演奏される”Here’s That Rainy Day”を何か中途半端なテンポで演奏しているのですが、ここまでこのトリオを聴いてくると(つまりすでに嵌っている)、実に調子よく演奏しているように聞こえてくる。静謐なピアノはソロかと思われた”Song for Bill”(ソロは”Step by Step”)で、その反対にオーソドックスなジャズ・ピアノ・トリオは次の曲で聴くことが出来ます。あまりオーソドックスなものもちょっと、かといってモード系も苦手で、今まで未聴のアーティストを聴きたいというわがままなお願いにはピッタリかもしれない。

MOOD INDIGO / JOOP VAN DEUREN TRIO ( : ) 2010
Players: Joop van Deuren(p), Hans Beun(dr), Erik Robaard(b),
Tunes: I’ll Remember April, Mood Indigo, But Not for Me, Impro on Anything but Love, Little Sunflower, You’d Be So Nice to Come Home to, In My Solitude, Blues for Alex, Emily, Who Can I Turn to, Briguinha de Musicos,
上記2枚やIgnasi Terrazaなどを聴くリスナーには既におなじみのピアノ・トリオかもしれません。雰囲気あるジャケットで、聴く前から気持ちを上げてくれた前作のそれに比べると、今回は「?」ナンダこれはと言わざるを得ないのですが、演奏は期待に十分応えてくれる内容となっています。冒頭から、”I’ll Remember April”はやっぱりこうだろうと云わんばかりに、単音を丹念に重ね連ねていく、変わらない演奏スタイルとフレーズ作りにホッとする。そういえば、オランダの大先輩にLV・ダイクがいました。前作の”Autumn Leaves””Body and Soul”のようなクラシカルな導入パターンの”Mood Indigo””You’d Be So などリスナー心を擽る。映画のテーマ曲のような”Little Sunflower”も創造力を刺激する。まあ、パターンと言えばパターンではあるのですが、この曲をどんな風に聴かせてくれるのだろうと期待を抱かせるミュージシャンの一人です。自分の土俵に巧く曲を上げていて、どういうわけか聴き厭きない希有なタイプだと思う。たぶんその潔さにあるのかもしれない。きっとそうだ。

LIVE AT DEANNA’S / BRIAN CHARETTE TRIO (Soulsearch: ssm009) 2003
Players: Brian Charette(p), Matt Penman(b), Ari Hoeing(dr),
Tunes: All the Things You Are, My Romance, Cheesecake, I Don’t Stand a Ghost of a Chance with You, Solar, Don’t Explain, Stella by Starlight, Corcovado, What Is This Thing Called, Love, I Got Rhythm,
演奏はいずれもかなり出来上がっていると思いますが、それより何より、近頃これほど孤高感漂うライブ盤も珍しいような、エヴァンスのヴァンガード盤以来と言い切っても良いくらいです。客に聴く気がない?ジャズ・ライブ盤ほど素晴らしいものはない。演奏が進むにつれて、だんだん客の数が減っていっているのではないか、最後の曲が演奏される頃には、飲んだくれてテーブルに突っ伏した客や、客のいないテーブルには椅子が上げられて掃除のおばちゃんがモップで床を拭いているのではないかと思えるほどのライブ感覚を体感できる、まるで自分が目撃者のような・・、何かそんなイメージが頭の中にゆらゆらと浮かんですらくる。録音のレンジもそう思わせるに足るような音の捉え方をしているような。そんなグダグダ感が味わえる素ん晴らしいライブ盤で、鍵盤の上で指が開いたり閉じたりするよりは、上に行ったり下に行ったりする回数が多いのが気になるかもしれませんが、”All the Things You Are”だけを聴いてお帰りになっても、十分モトは取れると僕は思う。Brian Browne系を捜索中の方には是非。

TRIBUTO AI SESTETTI ANNI 60 / LUCA MANNUTZA SOUND SIX (ALBORE JAZZ: ALBCD-008) 2010
Players: Luca Mannutza(p),Andy Gravish(tp), Paolo Recchia(as), Max Ionata(ts), Renato Gattone(b), Andrea Nunzi(dr),
Tunes: Ezz-thetic, Short Story, Sweet ’n’ Sour, Litha, You Know I Care, The Big Push, Grew’s Tune, On the Ginza,
久方ぶりに小細工などしない、スカッとする、ものの見事にあっぱれなハードバップ・セッション。演奏される曲目は、すべてジャズメンの手になるオリジナルであり、しかも個性あるミュージシャンによるものであるにもかかわらず(George Russel, Chick Coreaなどで, Wayne Shorter3曲もあり、曲目の選択基準はわかりませんが)、ストレートな演奏を貫いていることが潔くもあり、何より歌心が忘れられていない演奏を、単なる郷愁でもなく、厳然たるリアルタイムのジャズとして気持ちよく聴けることが嬉しい。また、ハードバップが本来的に持つハードボイルド感(僕だけがそう感じているだけかもしれない)が前面に押し出されていることがさらに聴く喜びをたかめてくれている。いきなりGeorge Russelから始まるのですが、いわれのない畏怖感を我々に与えることもなく、すんなりと入っていける風呂敷を広げてくれているLUCA MANNUTZA SOUND SIXの優しさに感謝するしかなく、最後までこのテンションを切らすことなく聴き続けられる。

NOSPHERANTÂ / PHILIPPE MILANTA TRIO (JAZZ AUX REMPARTS: JAR 64016) 2004
Players: Philippe Milanta(p), Bruno Rousselet(b), Julie Saury(dr),
Tunes: Nospherantô, Coquine, April in Paris, My Funny Valentine, Just One of Those Things, Sumeru, Drop Me off in Harlem, Exquise, CH-SH, Why?, Secret Love,
今回のThis Side Up 2もそうですが、この曲をどのように聴かせてくれるのだろうかと思わせるミュージシャンが、そう多くはいないにしても、何人かの名前をあげることができます。このPhilippe Milantaもそのうちの一人と言えます。前回取り上げたCDでは、いわゆるスタンダード曲をそれなりにまともといえる範囲内で弾いている曲はなく、かと言って根本から変えられているというものでもなく、「そうきましたか」といったレベル(メロディ、ハーモニー、リズムの七変化)で楽しめる、それこそアレンジが施されていました。今回もスタンダード(彼のオリジナルではなく)が5曲入っていますが、これをどうアレンジしてるのかが聴く前の大いなる楽しみとなっていました。比較的温和しめのもの、想定内の曲がある一方で、想定外の曲もありました。あまり聴く機会がなく、一番楽しみしていた Drop Me off in Harlemがほぼ原曲の「げ」の字もないほど(それほど大袈裟でもないが)に換骨奪胎されていたのはちょっと残念だった。その力強いピアノタッチは十二分に堪能できる。


2 Aから始まる・・・

アルファベット一巡して、また同じような回転も芸がないので、Aから始まる楽曲で「これが好きです」といったものを順番に・・・

A-1

SWING SESSION: LIVE AT THE JUNK (TRIO: PA-9725) ?

Players: Eiji Kitamura(cl), Satoru Oda(ts), Muneyoshi Nishiyo(tp), Ichiro Masuda(vib), Kazuo Yashiro(p), Masayuki Ikezawa(b), Hiroshi Sunaga(dr), Martha Miyake(vo)*,
Tunes: Lester Leaps in, My Ideal*, It’s a Sin to Tell a Lie*, After You’ve Gone, These Foolish Tings, I Can’t Give You Anything but Love,
[AFTER YOU’VE GONE]言及したこともあるかと思いますが、ここで取り上げるアナログ盤B1曲目をはじめ、とにかくミュージシャン全員が楽しんでいるライブで、こういうのは聴いていて飽きない。リーダー格の北村英治のクラリネットが緩急自在に抜群のフレーズを生みだすところはさすがで、ヴォーカルのバラード曲でもすぐれた間奏を聴かせる。また、八城一夫は変幻自在、ここではかなりホンキートンクで楽しさ溢れるピアノを弾き(最後の曲では「フニクリ・フニクラ」の一節が飛び出す)、須永宏のドラムと共にバンドのスイング感を支えている。あらためて須永氏のドラムには「上手い・巧い・旨い・美味い」と、どの形容詞をつけようかと迷うほどで、ブラシ・ワークは絶品と思う。
A-2
BLUES IN THE NIGHT / SONNY CLARK TRIO (TOSHIBA EMI: TOCJ-1618) 1958
Players: Sonny Clark(p), Paul Chambers(b), Wes Landers(dr),
Tunes: Can’t We Be Friends, I Cover the Waterfront, Somebody Loves Me, Dancing in the Dark, Blues in the Night(alt. Master), Blues in the Night, All of You,
[ALL OF YOU]:ここのところDuke Pearsonに気が向いてしまっていたのですが、結局のところまた戻ってきてしまいました、といったところでしょうか。まあ両者とも良いのは間違いない。さて、これはブルーノート発掘シリーズCDの一枚として出たものですが、1500番台トリオ盤のコンプリートCD(Disc 2)に収められていた曲と重なっています。Sonny Clarkのピアノの魅力は粘っこさ(日本人にはわかりやすい「こぶし」)ですが、コード・フレーズ?とシングル・フレーズの按配が絶妙なところ、そしてその按配を生み出す、演奏する曲のテンポの設定にあると思う。また、いわゆるスタンダードと言われている曲のテーマを比較的「ちゃんと」弾いてくれるプレイヤーであるということもポイントを高くしている。

A-3
GIRL TALK / TSUYOSHI YAMAMOTO (TBM: TBM CD 1859) 1987
Players: Tsuyoshi Yamamoto(p), Akira Daiyoshi(b), Tetsujiro Obara(dr),
Tunes: The Way We Were, Girl Talk, Gone with the Wind, Take The “A” Train, I Love You Porgy, What Now My Love, Autumn in New York,
[AUTUMN IN NEW YORK]:演奏しているミュージシャンは多い。ただ、この曲はあまりヴァリエーションがなく、特にテンポの取り方に大きな違いが聞かれず、スネークマンショー的には「まあどれをお使いになっても同じような…」ことになり、「これ何ですか?」といえるようなむちゃ早いテンポの演奏は、例えばピート・ジョリーにあったりするのですが、これは既出なので、淡々としたそのシンプルさに弾かれる(魅かれる?)山本剛のこれを。結局、この曲はジャズ・ミュージシャンにとって何らかのコンセンサス(早く弾いたり遅くテンポを落としたりするような冒涜をこの曲に対しては犯さないといった)が共有されているのかもしれない。ビリー・ホリデイの名唱を汚すな、かな?といいながら、ここでのように途中でややテンポ・アップする演奏は聴かれたりするのですが…。



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