first updated '2011 August 15

JAZZ COMMENT ? 76


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      1 ここしばらく聴いているもの

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1 ここしばらく聴いているもの

THE LITTLE DRUMMER GIRL / JOE & PAT LA BARBERA (FIVE STAR RECORDS: FSY-513) 2011

Players: Joe La Barbera(dr), Pat La Barbera(ts), Bill Cunliff(p), Mattias Svensson(b),

Tunes: Boxer Rebellion, The Little Drummer Boy, Bella Luce, Softly as in a Morning Sunrise, Charade, If Not for You, Cloth of Silver-Threads of Blue, Time after Time, Yours or Mine or Blues, There's a Lull in My Life,

兄弟名義のリーダー・アルバムで、ハードバップ・ファンには嬉しいお知らせです。「神」に接近する以前のバリバリのハードバッパーだった頃のコルトレーンをしのばせる、なかなか骨があり、重厚感あるパットさんのテナーがしっかりと捉えられていて、彼の演奏にもその系列に連なる正統派テナーの面目躍如たるところがあります。と言いながらも、パットさんのテナーを聴きながら、ふとジョージ・コールマンあたりが頭の中をよぎったりもしました。パットさんがゴリゴリ(1曲目とか9曲目とか)と吹く演奏もそれはそれとして良いのですが、3曲目や最後のバラード演奏には「おっ!」と思ったりもしました。そのラストの、朗朗と言うよりも、噛み締めるように吹く彼のテナーは、コルトレーンの『バラード』かなと錯覚するような、聴いていてそんな気になってきました。この曲でのBill Cunliffeのピアノのタッチは素晴らしいです。今回取り上げたCDは、最後の曲がしっとりと締められる(閉められる?)曲構成になっているような(荒井由実の頃のアルバムも最後はしっとりと締めくくられていました)。特にこれからの季節はそういう流れはしっくりくるはずです。すでにハウス・ドラマー、ハウス・ベーシストとなっているふたりは、前者は軽快に、後者はどっしりと重い、通常営業といったところでしょうか。1曲目の"Boxer Rebellion"は中国清朝末期の「義和団の乱」のことかなと思っていたら、そうではなくジョーさん宅のやんちゃな犬を意味しているらしいです。以前からメロディは浮かぶが曲名が出てこなかった2曲目の曲名が判明したことは思わぬ収穫でありました。

TURN THE TIDE / PETER AURET TRIO (AFRISONIC RECORDS: ) 2011

Players: Peter Auret(dr), James Sunney(b,el-b), Roland Moses(p),

Tunes: Turn the Tide, Here Comes the Sun, Who Will Watch the Watchmen, The Dene, Dream Country, Susan-Lee, Panorama, As I was Saying…, Until We Meet again,

てっきりピアノがPeter Auretだとばかり思っていたら、ドラマーが彼でした。ピアノ・トリオだとピアニストがリーダーであるとの思い込みはいけません。珍しくも南アフリカ発のCDなのですけれども、彼の地でどうもどちらかといえばロック畑を歩いてきたドラマーのようです。ロック畑だからジャズはどうなの?ということでもありません。ジャズ大好きでも、ローリング・ストーンズのドラムを叩き続けているチャーリー・ワッツの例もありますから。ただ、ワッツがジャズ・ドラマーとしてのデビューは最近のことですが・・・。さて、Peter Auretの率いるこのトリオ、さすがにまともな?、オーソドックスな4ビートジャズを聴くことはかなわず、コンテンポラリーなジャズ演奏ということになるのでしょうが、僕のようなジャズに関しては保守的な人間が聴いても、これは実に聴き応えがあると思いました。普通であればあまり積極的に聴く姿勢にならないCD(1曲以外聴いたことがないメンバーのオリジナル曲が並んでいる;エレキベースも使用されているようだ;・・・)なのですが、ジャケットに何かしら力を感じたからなのだろうか。実際には、オリジナル曲は馴染みのなさが気にならないどこかにあったようなテーマ・ラインだし、全篇でベースがエレキというわけでもないし、ドラマーがリーダーといっても「俺が俺が」感は全くと言ってないし、実にトリオとしてまとまりある演奏に終始した、聴き飽きないCDになっている。例えば、"Susan-Lee"の刹那さが滲み出るメロディはどうしたものだろうか。でも、iTunesのライブラリーでアーティストのABC順で、最後の"Until We Meet again"の次に出てくるのがPeter Beetsの「New Groove」1曲目"I'm Old Fashioned"なんですが、まあ「ホッ」とするのも事実ではあります。

I CONCENTRATE ON YOU / SKIP WILKINS TRIO (DREAMBOX MEDIA: DMJ-1133) 2011
Players: Skip Wilkins(p), Scott Lee(b), Jeff Hirshfield(dr),
Tunes: I Concentrate on You, Wonder Why, A Garden in the Rain, Bye Bye Blackbird, A Portrait of Jenny(take one), Alone Together, Who Cares, Luiza, Softly as in a Morning Sunrise, A Portrait of Jenny(take two),
アメリカのニューイングランド地方で演奏活動しているピアニストのようです。もう一枚と併せて、今回初めて聴きます。ネットでDiscographyを見るところ、フルーティストと共演した録音や、ピアノ・ソロはあるにしても、ピアノ・トリオ演奏の録音がなく、今回のCDがどうも初めてのようなのです。何とも珍しい。ピアノ・トリオ偏重の我々サイドから言えば、「何ともったいない」ということに。さて、ヴェテラン・ピアニストは如何なる演奏を聴かせてくれるのかといえば、ここではスタンダード曲演奏という枠がありながらも、その範囲内で、例えば、軽快な顔("Who Cares")、爽快な顔("Wonder Why")、沈んだ顔("Bye Bye Blackbird")、鈍重な顔("Softly as in a Morning Sunrise")、憂いた顔("Luiza")、静穏な顔("A Garden in the Rain")など、いくつかの顔を見せてくれます。ということで、本物は誰だ、みたいですが、さほどフォームに違いがあるとは感じられない"A Portrait of Jenny"を敢えて二度収録したことから言えば、これが彼の本質のように思います。もう一枚のオリジナル曲盤を聴けば、全体的な印象からすれば、やはりメロディアスで優しげなフレーズに包まれているピアノがそうなのかな、と。とは言っても、まあ多彩な顔を持つピアニストなのだと認識しておくのが正解だと思われます。

THE STORY TELLER / GEORGE KONTRAFOURIS TRIO (PIECE: 002) 2007

Players: George Kontrafouris(p), Kostas Konstantinou(b), Alvester Garnett(dr), Lydia Filipovie(vo)+. ,Sam Newman(ss)+,

Tunes: The Story Teller, Anna Is Waiting, Oj Djevojko Dje Si Ruze Brala+, First Flight, The Ship of the Forest, Undercover, Yiannis B, The Last Ride, Early Days,
基本的にストリングス入りは敬遠してきた。チャーリー・パーカーのwith Stringsであれ、George Robertであれ、どうも腑に落ちないところがある。それは何だと問われても答えはハッキリしない。そして、このCDをどうしたものかと長らく思案し、ただ、ここではwith Stringsといっても、オーケストラ・スタイルではなく、弦楽四重奏的なバックであり、取って付けた感はせず、むしろあることによる爽快感みたいなものがある。まあ、全篇ストリングスが流れず、1,4,8の3曲のみというのも差し引きゼロかな・・、よくわかりませんが。このピアニスト、ホームページをのぞいて、ビックリ。あの、"Don't Be Shy"の人のようなのである。確かあのCDではYorgos Knotrafourisだったはず。Yorgosは英語名でGeorgeになるのだろうか。とにかく、Discographyにあのジャケ写が載っていて、その下にGeorge Kontrafourisとハッキリと明記されている。それもリーダー作として・・・。まあ、あのCDは魔が差して処分してしまったから、今となっては別にいいんですけど・・・。閑話休題。それにしても、ここではいろんな表情を見せてくれます。"Don't Be Shy"で聴かせてくれた、ピアノの左半分でほぼ構成した曲演奏みたいなものは今回ありませんが、それでも急速調の曲では一糸乱れず鍵盤をかけめぐる明快なフレーズを、バラードでは紡ぐような可憐なメロディを、またモダンな曲ではモーダルな展開を。ヴォーカルの1曲は・・・あまり気にしないようにしています。

LOST IN QUEENS / KEITH SAUNDERS TRIO (TCB: 29302) 2009
Players: Keith Saunders(p), Bim Strasberg(b), Taro Okamoto(dr),
Tunes: The Group, Nobody Else But Me, Where's Mazzei?!, Rebecca, In Search of the Lost Camel Paths of Maspeth, How Deep Is the Ocean, Lucy, I Concentrate on You,
The New York Hard-Bop Quintetで名前を認知したKeith Saundersのリーダー作。このクインテットでの演奏が気に入っていたので期待していたのですが、初めて聴いたときには、期待が大きかったからか、「ん~こんなものなんかいな~」とちょっと良い印象を持たなかった。Quintetのフレームのはっきりした演奏をイメージしていたこともあって、どちらかというとここでは、散漫ということではなく、フレームが緩いというか、ゆったりとした時間が流れていることがそう思わせたのかも知れない。上記のGeorge Kontrafourisみたいなとは言わないまでも、全体的に今ひとつのメリハリみたいなものが欲しいかなという気はする。何か、ジャケットとタイトルが象徴的な・・・。さて、そうこうするうちにたまたま再聴する機会があって、「あれ、以前に思ったほど悪くはないのでは」と。以前は前半の何曲かを聴いて止めてしまったような気がする。今回は最後まで聴いた、その違いかも知れない。ちゃんと聴くべきであると反省している次第ですが、ただ、やはりこの人、何かに惑わされることなく、もっとストレートに弾いてしかるべきではないかと思う。Quintetでの良さもそこにあったのでは、といってもそれはこちらの要求でしかないことは承知していますが。"How Deep Is the Ocean"からの3曲なんか良いです、前半でゆるんだネジを締め直しているような。できれば今はなきPrestigeで聴いてみたかった。ところで、ドラマーのOkamotoさんの名前がTako表記になっている。

ESPOIR / PASCAL FOSSARD QUINTET ( : ) 2007
Players: Pascal Fossard(sax), Michel Barbe(p), Xavier Bornens(tp), William Bilman(b), Florian Bellecourt(dr,vib), Said Oumghar(vo)+, Typhaine Lemoine(vo)+,

Tunes: Aurora Boreale+, Caballo de Fuego+, Rendez-Vous a Versailles, A Mathilde, Ton Soleil est Ma Lune, Jojo+, Espoir, ,

1曲目が始まったあたりは、何か1960年代のヘンリー・マンシーニが音楽担当の映画のサウンドトラックのような雰囲気で、そうこうするうちに様子が少しづつ変わり始めて、「これやばいかな」と一瞬思ったりします。最終的には、コチラの気分としては、ローランド・カークのアルバムを聴いているような錯覚に陥っていました(特に最後の曲)。カークの名前を引き合いに出すのは適当ではないかもしれませんが、表面的にはどうであれ、つまりはとてもオーソドックスなジャズ演奏だということです。モーダルな旋律が洪水のごとく襲ってきそうですが、決してそうではありません。耳にすんなりと馴染むフレーズが奏でられています。そういう思いで聴けば、フォーム的にはジョージ・コールマンがいた頃のマイルス・デイヴィス5のよう?(ハード・ブロウイングではないので、ずいぶん違うような気もするけど)。テナーはハード・ドライブ感ある一方、ペットはメロディアスな哀愁感が漂い、ピアノはクリアで堅固なタッチが印象的で、これが上手い具合に混ざり合って、押したり引いたりしながら曲全体を構成している。時折聴かれるドラムのFlorian Bellecourtが叩くヴァイブもアクセントになっているように思う一方で、そこに出てくる意味をもう一つ掴みかねているコーラスはどうなんだろうか(あっても悪くないですが)と思います。結論は、何だかんだと言ってますが、かなり楽しんで聴いています。また、特にペットのXavier Bornensを認識できたのは収穫でした。


2 整理しようと思ったのだけれど・・・ W-Z篇

JAZZ IS WHERE YOU FIND IT / THE WALTZER - McHENRY QUARTET (FRESH SOUND NEW TALENT: FSNT 021 CD) 1997

Players: Ben Waltzer(p), Bill McHenry(ts), Alexis Cuadrado(b), Jo Krause(dr),

Tunes: Time on My Hands, Suddenly It's Spring, Eix, 2°East 3°West, Greenwich, The Touch of Your Lips, The Thick Plottens, Quasimodo, As Long As There's Music,

Ben Waltzerならピアノ・トリオでしょうけれども、もう一枚がピアノ・トリオなので、双頭カルテットを。ここ20年近く、FSNTとCRISS CROSSは若手ジャズ・ミュージシャンの登竜門的な役割を果たしてきたといえる。かなりモダンなものからかなりオーソドックスなものまで、良いものは良いというスタンスで、その貢献度は、言ってみれば、50年代のジャズ・レーベルに準えることもできる。もちろん、当時のレコードを出すよりは、今日のCDを出すことの方がハードルはかなり低いとしても。ここでピアノを弾いているBen Waltzerもそうした一人。なかなか良いタイトルのついた、バルセロナのクラブでのライブ録音。Ben Waltzerのヴァーサタイルなピアノとは対照的に、Bill McHenryはやや籠もり気味ながらもハスキーな朴訥とした、ミディアムからスローで聴かせるタイプのテナーで、バリバリと吹きまくる姿は想像しにくい。実際、ここでも急速調な曲はみられず、また1曲目などピアノ・トリオかと思っていると、もう終わりかといった頃にそろそろ~と吹き出すといった具合。でも、2曲目の前半は、今度はドラムとのデュオで聴かせてはくれますし、"Greenwich"でのモダンなフレーズのテナーも結構良い。最後はピアノとテナーのデュオで、しっとりと余韻を残して締めくくられる。こうしてみると、唯一入っているBen Waltzerのオリジナルが他の曲と並べて聴くとちょっと違うかなぁ。


QUASI TROPPO SERIO / ENRICO ZANISI TRIO (NUCCIA: NUCCIA005) 2009

Players: Enrico Zanisi(p), Pietro Ciancaglini(b), Ettore Fioravanti(dr),

Tunes: Von Fremden Landern und Menschen, Chantez, Alone Together, Corale, Springtime, Il Volo, Just in Time, Isidare, Easter Eggster, Il Caso Pane,

シューマンの『子供の情景』第1曲がいきなりピアノ・ソロで奏でられて、アルバムを間違ったかなと思いつつ、「へぇ~」と感じ入っているうちに2曲目のオリジナル"Chantez"へと移行していく。ベースで始まる2曲目はシューマンの曲の変奏曲のように仕上がっていて、この連続性に違和感を感じない。"Alone Together"は結構音の押し出しが激しい仕上がりで、どうも全体的には1曲ごとに、強・弱、激しい・柔らかい、の循環編成になっていると思われます。強では"Springtime"、弱では"Corale"が気に入っています。CDが進むにつれて、穏やかな路線、オーソドックスな路線から少し逸れたりもしますが(想定の範囲内)、そこは未だ若いピアニスト(1990年生まれ?)だから、大目に見ましょう。YouTubeで演奏を視聴したり(想定の範囲内も含め)すると、陽気なイタリアンよりは、やや神経質そうな印象を受けます(先月の野外ジャズ演奏会ではTシャツ・短パンという軽い感じで演奏してたり、実際はわかりません)。どうであれ、新作を待望しています。ピアノのタッチは硬質で、音粒が立っており流れたりすることなくクリアなので、極めて耳障りが良い。ドラムのEttore Fioravanti(同い年だ)も協調的で、若いピアニストを盛り立てて、演奏のレベルを上げています。メンバーのオリジナルをスタンダード曲などの合間に入れ込みながら、シューマン作曲のソロで始まり、バカラック作曲のソロで終わります。



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