first updated '2010 Feb. 25

JAZZ COMMENT ? 71


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      1 ここしばらく聴いているもの

      2 整理しようと思ったのだけれど・・・ O・P篇


1 ここしばらく聴いているもの

STILL STILL STILL / MARTIN SASSE (NAGEL-HEYER: 2090) 2009

Players: Martin Sasse(p), Henning Gailing(b), Hans Dekker(dr),

Tunes: Still Still Still, Hark! The Herald Angels Sing, Leise Rieselt Der Schnee, Maria Durch Ein Dornwald Ging, A Child Is Born, Let It Snow Lei It Snow Let It Snow, The Christmas Song, The First Noel, Süßer Die Glocken Nie Klingen, Mary's Boychild, In Dulci Jublio, Winter Wonderland, Stille Nacht, Jingle Bells, Christmas Comes but Once a Year,

クリスマスは10ヶ月も先なのにというのは全くの逆で、2ヶ月も過ぎてしまった今頃なんだということなのですが、このレーベルいち押しのピアニストMartin Sasseのクリスマス特集。お馴染みの曲目も交えながら、実に真摯で静謐な、品格あるピアノ・トリオに仕上がっていると思います。まあ、クリスマス作品集でなかなかおふざけは出来ないでしょうけども。破綻を少しぐらいは求めるリスナーにはあまりにスクエアかもしれませんが、ラストを飾る唯一のオリジナルがここに及んでブルーズ演奏とは「えっ!?」としか言えない。クリスマスの呪縛?から解放されたかったのでしょうか?ジャケット内側の曲目紹介で"A Child Is Born"のクレジットがtraditionalになっているのはThad Jonesに失礼なのでは。

DARK WOOD DARK WATER / CHAD MCCULLOGH (ORIGIN: 82535) 2009

Players: Chad McCullough(tp,flh), Mark Taylor(as,ss), Geof Bradfield(ts,ss), Bill Anschell(p), Jeff Johnson(b), John Bishop(dr),

Tunes: Three Pillars, Blackbird, Nightmare's Dance, Lock Down, Home, Bock's Car, Anatomy of Conscience, Dreamscape, The Oracle,

ビートルズの"Blackbird"以外はリーダーのChad McCulloughのオリジナル中心で構成され、ちょっと怯まないこともないわけですが、1960年代前半に聞こえてきたであろうハードバップを頭の中で鳴らしてみると、確かにそんな感じにも聞こえてくるそんな雰囲気を持っている。CDのタイトルがそうなってはいますが、全体的にやや重たいかなぁという気がしないでもない。言い方を変えれば重厚な演奏だとも言えるのでしょうが。もちろん、いやらしい重さということではありません。全体を覆い尽くすようなリーダーのフリューゲルホーンも、それこそ重厚に響くベースも良い感じです。いつもクリアーなタッチとフレーズのBill Anschellのピアノも結構味わうことが出来るので僕は満足です。


IN BETWEEN MOODS / TONY FOSTER (TFM001) 2009
Players: Tony Foster(p), Russell Botten(b), Joe Poole(dr),
Tunes: Take the 'A' Train, Cakewalk, Colors of Siera, Mr. J, How I miss the Rain, Jamal, In Between Moods, Someone to Watch over Me/You've Changed, Serious Grease,
カナダのピアニストのトリオ演奏。自作が4曲とジャズマン・オリジナルが4曲で、いわゆる唄もののメドレーが1曲。粒だったよく転がるピアノは耳に馴染み、スイング感も申し分ありません。ベースも安定感があります。アイデア良く反応するドラムが、これまた抜群に良いです。つまり、このトリオ、きわめて良い感じです。一つ一つの曲の構成も錬られています。で、全篇ピアノソロである"Colors of Siera"が僕にはあまり面白いと思われなかった(特に前半)のは残念としか言いようがなく、チェンジ・オブ・ペースとしたかったのかどうかわかりませんが、これだけ軽快なトリオ演奏が傑出しているのに・・・。でも、とにかく楽しみなピアノ・トリオがまた一つ増えたことは喜ばしいことです。

IN NEW YORK ON TIME / LIBOR ŠMOLDAS (ANIMALMUSIC: ANI 016-2) 2010

Players: Libor Šmoldas(g), Sam Yahel(p), George Mraz(b), Jedd Ballard(dr), Zeurítia(vo)*,

Tunes: Get Me to the Church on Time, Lydian Blues, Autumn in Three, I Could Have Danced All Night, I've Accustomed to Her Face, Who's Got Rhythm*, Wes for Pres, Tram Line, Wouldn't It Be Lovely, Brazilian Impressions*,  

チェコのギタリストLibor Šmoldasのニューヨーク録音。リーダーのオリジナル以外は『マイ・フェア・レディ』集という「何でなの?」と、ちょっと不思議な構成の曲目選択。アンドレ・プレヴィンが好きなのか、ヘップバーンが好きなのか、作品が好きなのか。バックはピアノ・トリオで、オルガンでないSam Yahelは珍しく、いつもOndrej Pivecと演奏しているのでオルガンではなく、でもオルガンから離れられず、オルガンも出来るSam Yahelにピアノを弾いてもらったのかもしれない。このSam Yahelがまたオルガンとは違うピアニストとしての別の顔で存在感を示していて、感心しました。タッチが堅くて"I Could Have Danced All Night"のソロの最初なんてプレヴィンみたいに聞こえたりして。東欧には意外と優れたギタリストがいて、ハンガリーにもGyárfás Istvánなんています。それにしても、ジャケット裏George Mrazの写真は、裏で違法賭博をして捕まったクラブのオーナーみたいで、もう少しどうにかならなかったものか。ベースは相変わらず抜群の安定感と音程を聞かせてくれているのに。


CESTA DOMU / JAROSLAV SIMICEK (2HP: F10177) 2009
Players: Radek Zapadlo(ts.fl), Matej Benko(p), Jaroslav Simicek(b), Tomas Hobzek(dr),
Tunes: The First Ball, The Town of Valasske klobuky, One for My Dad, Blue Life, Brain Teaser, The Way Home, Sirius, Hucky, Delta of Silence, Spring Song,
ついでにチェコをこの際もう1枚。既に周知であろうと思われますが、上で名前が出たOndrej Pivecの関係者がドラマーを叩いてますし。ベースのJaroslav Simicekがリーダーのワンホーン・カルテット。オーソドックスでありつつもコンテンポラリーな演奏を聞かせます。アメリカのエリックやらグラントやらが人気を博していますが、一部で知られてはいたものの、なかなかどうしてチェコにも豊饒で耳を寄せ付けるフレーズを綴ることのできるテナーマンがいるわけです。これはピアニストのMatej Benkoに関しても言えるわけで、少しづつそのCDを聴く機会が増えていくのは嬉しい反面、何だかなという気がなくはないのがどうしたもんでしょう。1曲を除いてすべてリーダーのオリジナルでありつつも、いっきに聴かせるその音楽センスは只者ではない。自作であるにもかかわらず、それほど「俺が」的野心も表面には出さず全体を俯瞰できる冷静さをも持ち合わせている。テナーの短調的哀愁さとピアノ・トリオの軽やかさが奇妙にマッチしていて、聴いてて飽きない。

THAT'S AMORE / THE DICK FREGULIA TRIO ( BLUE KOALA RECORDS: BKCD10) 1998
Players: Dick Fregulia(p), Jeff Neighbor(b), Omar Clay(dr),
Tunes: That's Amore, Spring Isn't Everything, Sweet and Slow, Summer Night, My Heart Tells Me, There Will Never be Another You, Serenade in Blue, Would You Like to Take a Walk?, You're Getting to Be a Habit with Me, An Affair to Remember, I'll String along with You, Chattanooga Choo Choo, This Heart of Mine, That's Amore,
これまた往年のウエストコースト・ジャズ華やかし頃を彷彿とさせるピアノ・トリオ演奏で、数々の曲をそれこそティン・パン・アレイの頃から制作し続けたHarry Warren作品集になっています。ただし、"Serenade in Blue""That's Amore""Would You Like to Take a Walk?"はピアノ・ソロで、前者2曲はライブ録音です。Harry Warrenはエラのソングブック・シリーズで取り上げられなかった不運なコンポーザーで、このCDに入らなかった"Jeepers Creepers"とか"September in the Rain"をはじめ、本格的ミュージカル映画の草分け『四十二番街』やアカデミーを取った"Lullaby of Broadway"等あるにもかかわらず。とまれ、重厚感やゴツゴツ感やひっかかり感など一切なく、ひたすら流麗にスイングするピアノのフレーズに浸る1時間。こうした唄もののソロを弾けるピアニストを失わないようにしたいものです。

SPIDER'S BLUES / DICK JOHNSON AND THE DAVE MCKENNA RHYTHM SECTION (CONCORD: CJ-135) 1980
Players: Dick Johnson(cl,fl,ss,as), Dave McKenna(p),

Tunes: Carioca, Lazy Afternoon, Confirmation, A Gypsy Air, Lush Life, Shawnuff, Jitterbug Waltz, Spider's Blues,

最近知りました、管楽器の達人Dick Johnsonが亡くなったことを。2010年1月10日、享年84才(Ed ThigpenとJake Hannaはまた次回)。存命だったことの方がびっくりだったかもしれない。なので?、追悼を込めてここに「J」の追加を。CDになっているのは既出ですから、未CD化が多いコンコード録音のアナログ盤の、Dave McKennaとのデュオを(Dave McKennaはバディ・デフランコとのデュオもコンコードに残しています)。”THE DAVE MCKENNA RHYTHM SECTION”の通り、Dave McKenna一人でピアノ・トリオの役割を果たしている。Dave McKennaも絶好調なら、Dick Johnsonも絶好調。例えば、既出CDでの"Donna Lee"と"Who Cares"の演奏に相当するのがここでの"Confirmation"と"Shawnuff"で、ベースとドラムがなくてもそのスイング感とタイム感覚とフレーズの押し出しが微動だにしないところが凄い。


2 整理しようと思ったのだけれど・・・O・P篇

    オークションに出す方が良いのか、専門店に買い取ってもらう方が良いのか、残した方が良いのか・・・
    整理している中で、こんなのが眠っていたというものの中から・・・でも、どうしよう・・・。

SILHOUETTE ASCENDING / CLEMENS ORTH TRIO (MONS: MR 874-328) 2000

Players: Clemens Orth(p), Dietmar Fuhr(b), Matthias Kornmaier(dr),

Tunes: Double Flavour Suite, Mortal Conditions, Blue in Green, Seven Steps to Heaven, Unison Jamboree, Silhouette Ascending, June 15th 1995, East of the Sun, Mondstaub, Song for Bill, Smells like Teen Spirit,
ハイデルベルグでクラシックを学び、ケルンでジャズを学んだドイツらしい真っ当な遍歴をたどったピアニスト。こう言っては何ですが、どうにもこうにも暗澹たる気分に浸される最初の2曲でへこんでしまい、エヴァンスの3曲目で何とか持ち直し、さすがに天国への階段は地獄には行かないだろうと期待するしかない。さすがの運指を聴かせつつも陽がさすことはない、さすがの音階感。1995年の7月15日に何があったのかはドイツ語のライナーでは判然としませんが、後半はおおむね捕まえやすくはなります。などと言いながらも、ここまで来たのは"Song for Bill"を聴くために他なりません。僕にとってはこの1曲のためにあると言って過言ではない。もちろんエヴァンスに捧げられているこの曲の雰囲気が全体に横溢していれば愛聴盤に位置付けられていたでしょうけど。

FREESWING /MICHEL PASTRE (DJAZ: DJ 734-2) 2006
Players: Michel Pastre(ts), Pierre Christophe(p), Raphael Dever(b), Stan Laferrière(dr),

Tunes: Midriff, Tulip or Turnip, Free Swing, Webstering, Hiawatha, Morning Glory, Sophisticated Lady, Kinda Dukish/Rockin' in Rhythm, What Am I Here for, Lazy Rhapsody,

ベイシー風のビッグバンドを率いつつ、このワンホーン・カルテットでは2曲のオリジナルを除いてエリントン・ナンバーを演奏しているMichel PastreはMarshal Royalみたいだ。Marshal Royalは勿論ベイシー・バンドのコンサート・マスターだったわけですが、ベイシー楽団を離れるとエリントンの曲を愛奏することが多かったので。さて、Michel Pastre、エリントンのBen Webster、ベイシーのHarshal Evansみたいだというか、そのつもりで演奏しているのでしょう。ピアニストも、エリントンの意識しているみたいというか、これは明らかだし。でも、実に達者なピアニストで、感心します。下手するととんでもないことになりそうですが、これをきっちりと堪えて聴かせますから大したものです。残念なのはライブ録音でなかったことでしょうか、きっと盛り上がったのに。


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