first updated 2009 June.20

JAZZ COMMENT ? 67


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1 整理しようと思ったのだけれど・・・H / I / J 篇
      2 最近聴いたもの


1 整理しようと思ったのだけれど・・・H / I / J 篇
    オークションに出す方が良いのか、専門店に買い取ってもらう方が良いのか、残した方が良いのか・・・
    整理している中で、こんなのが眠っていたというものの中から・・・でも、どうしよう・・・。

YOU’D BE SO NICE TO COME HOME TO / JOHN HAIBLE ( ) 1997
Players: John Haible(p), Jim Lyden(b), Gary Gemmiti(dr), Lenny Hatch(per),
Tunes: My Romance, Corcovado, You’d Be So Nice to Come Home to, Star Crossed Lovers, That Old Feeling, My Foolish Heart, Without a Song, The Girl Next Door, Pensativa, Dance of the Infidels,

言及されることなく、手にした後、そのまま棚に収まって今日に至っているのは、おそらくはこれほどのスタンダード曲を並べたピアノ・トリオという鉄板CDでありながら、そのスムーズでない、ちょっともつれ気味のタッチとフレーズがどうにも引っかかったのではないかと推測されます。改めて確認するに「そんなに悪くはないのに」と思うのですが、ただ単に「今度」と思いながら忘れてしまったとも十分考えられます。閑話休題。ライナーによれば、この人もともとクラリネットとアルトの人みたいです。幼い頃からピアノも習いながら管楽器を中心に演奏していたのかどうなのかがわからないのですが、本格的?なピアノは大学卒後のようです。そうしてみれば、何だこれはCoJazzのようなモノじゃないのかと。つまりJohn HaibleAndy Scherrerのようなものかと。パーカッションが入っているのも、明るいラテン的乗りの曲が散見されるのも当然かと。CoJazzの方が馴染みやすいでしょうけれども。というわけで、このCDの白眉は最後のB・パウエルの” Dance of the Infidels”でしょうか。そのフレーズとタッチのもつれ具合が往年のパウエルが弾いているのかと一瞬頭をよぎるほど顔がニコッとしてしまいます。


JIHI / DOUG HALL QUARTET (HEART MUSIC: HM00252) 2002

Players: Doug Hall(p), John Herbert(b), Bruce Hall(dr), Adam Kolker(ts,ss,b-cl),
Tunes: After The Beat, Dark Stream, Once around The Block, Jihi, Under The Rainbow, Side Trip, Silhouette, Be from You,

Hの欄は相対的なこともあり2枚選択してみようかと思い、じゃあもう1枚は何にすべぇと考えあぐね、こういうことでもないと出てこないモノからということでこれを、というと失礼な話なのですが、これを。Doug Hallは今は昔のIGMODのトリオ盤(これは本サイトで既出)でおそらく知られていると思われますが、こちらはフロントに管楽器が入ることで、よりモード系感が増した分、こちらとの距離感が増えてしまった。1曲目の出だしなんて「どうしよう」かと思っているうちにピアノが入ってきてようやく何か「ホッと」する。この曲でのDoug Hallのアップテンポのソロは実に達者だし、ピアノ・トリオの” Under The Rainbow”の演奏にしてもDoug Hallトリオ感100%なのですが、CD全体として何か暗い、重いイメージが拭いきれない。本当に失礼な話、トリオ演奏中心で、Adam Kolkerがテナー・サックスだけ吹いていてくれていたら、もっと早くここに登場していたかもしれない。ジャケットはJiHi(慈悲)と題された本CDの雰囲気を表象していると思われ良いと思います。再発見は、バス・クラリネットはやっぱり苦手だということがわかりました。


BLUE REQUIEM / YUICHI INOUE (PADDLE WHEEL; KICJ 339)  1998

Players: Yuichi Inoue(p), Yasuhiko Sato(b), Akira Igawa(dr), Akira Shimomoto(g)*,
Tunes: Tempus Fugit, Waltz for Debby*, Blue Requiem, Blues for Y. Y.*, My Romance*, Bird Watching, John’s Abbey, Secret Garden, Solar – Peace Piece*,

Iは海外モノでこの際というのがあまりなく、どういうわけか日本人が多いので、それなら井上さん名字だろうということで、それも井上祐一さんのデビューではなくセカンドを。1998年当時、彼は大坂=原クインテットのピアニストでありつつ、彼自身のバンドも並行させて活動していたとのことで、つまり本CDは井上さん名義のグループ・メンバーによる録音であり、大坂=原クインテット以外での活動の記録として聴けるということになる。デビューCDでもその傾向が聴かれたように思われますが、ここでもハード・アンド・ジェントルとでも言うのか、押すところはグッと押し、抑えるところはしっかり抑える、硬軟取り混ぜた選曲と演奏で、何曲かでフロントにサックス等の管楽器ではなくギターを加えたフォーマットにその意志を垣間見ることが出来ます。特に「軟」の曲では音色の柔らかさに拘っているようにも聴け、後の自然環境と同化するかの如きピアノ・ソロCDに繋がっていったのかもしれない。そういえば、関係ないでしょうけど、大坂=原クインテットの前任者水野修平さんもソロCDを出していました。3曲のオリジナルはいずれも魅力的な佳曲で、あまり聴けない” John’s Abbey”は嬉しい選曲です。


DICK JOHNSON PLAYS / DICK JOHNSON (CONCORD; CCD-4107) 1992(1980)

Players: Dick Johnson(as,fl,ss,cl), Dave McKenna(p), Bob Maize(b), Jake Hanna(dr),
Tunes: All The Things You Are - I’m Old Fashioned, Donna Lee, The Star Crossed Lovers, Kelly Green, When The World Was Young, Who Cares, Kelly Blue, In a Sentimental Mood, Everything I Love, Get Out of Town,

てっきり既出だと思っていたら出てなかったので、Jはこれを代表としておきます。CD化に際してはアナログ未収録が入っています。Concordにはもう一枚<Swing Shift>がありますが、こちらを。LP時代にはA面の”Donna Lee”B面の” Who Cares”ばかり、レコードを引っ繰りかえすのが面倒でもそればかり聴いていた記憶がある。かえってCDになってから他の曲も改めて聴いたような気がする。代表作は「Most Likely …(これもピアノはDave McKennaだった)だと思われますが、そのリバーサイド時代のアルトの音色とコンコード時代のそれと比べて大きな変化はなく、基本的には彼のアルトは西海岸的なムードが漂っているように思う。だからコンコードでのジャズ界復帰はあるべくして起こったといえます。マルチな彼は何を吹こうと基本は「ハデ」さにあるような気がする。ちょっとした「華やかさ」というか。決して抑制的、禁欲的、内省的な音色でもないし、フレーズもそうではない。アルトであろうとフルートであろうと、クラリネットでもそんな気がする。そんな彼には、逆に端整なスイング感が持ち味のDave McKennaのピアノが合っているんだろうと思う。


2 最近聴いたもの

HEAD UP HIGH / MATTHIAS SVENSSON TRIO (FIVESTARS: FSY509) 2009
Players: Matthias Svensson(b), Bill Mays(b), Joe La Barbera(dr),
Tunes: Head Up High, It Could Happen to You, Lullaby of The Leaves, Putte's Waltz, Philosophical about It, When Its Time to Go, Edelweiss, Atlantis Overdrive, Bye Bye Blackbird, Volare, Theme from Beethovens 9th Symphony,

Jan LundgrenのベーシストとしてもおなじみのMatthias Svenssonの初めてのリーダー名義アルバム。もれ承るところによれば、マシアスさんは初めてということでかなり意欲満々というか張り切った結果、盛りだくさんになったとのことです。それが触媒になったのか、あとの2人も津村和彦さんのバックで聴かせたプレイの勢いそのまま、あるいはそれ以上の意気込みが感じられる演奏を聴かせてくれます。前回でBill Maysを再認識したことに加え、ドラムのJoe La Barberaもかなり熱いサポートをしていることに感心。みんなで「お初」を盛り上げようとしているのでしょう。またここではBill Maysがフレーズ引用の名手であることも新発見かな。あちこちに何やら散りばめられています。マシアスさんも影響を受けている箇所がいくつか聴かれて、ジャズの聴衆者としてはとても楽しい。マシアスさんは揺るぐことのない安定したリズムと音程を刻むベースとしては当たり前の作業を、豪放で太っとい、確かで創造的な演奏へと昇華させる。これをいつもきちんと捉えた録音もまた素晴らしい。 ”Edelweiss” ”Volare”など、「おやっ」という嬉しい選曲があったりします。前者はほとんどジャズで聴いたことがない。同じ映画の中で、別の曲を超有名にしてしまったColtraneの罪は重い。最後の「第九」はマシアスさんの希望だそうです。今回の、ブルーノートあたりの頃を彷彿とさせるタイポグラフィカル仕様のシンプルなデザインも紙ジャケに填っている。


Plaça Vella / Jose Maria Farràs & Ignasi Terraza Trio (SWIT: REF.SWIT008) 2009

Players: Jose Maria Farràs(tp), Ignasi Terraza(p), Dimitri Skidanov(b), Jean Pierre Derouard(dr), Jesse Davis(as)*,
Tunes: Once I Loved, Plaça Vella*, I Remember Clifford, Temps de Canvis, It Could Happen to You, Autumn Leaves, Look for the Silver lining, Nits de Farres*, I’m always Chasing Rainbows, Solitude, If I Could Be with You,

そういえば”Love for Sale””Gone with the Wind”に似てなくもないジョビンの”Once I Loved”で軽快に始まり、何かを予感させる?果たして2曲目は”Woody’n You””Night in Tunisia”かといった雰囲気で、「ネタ元は何でしょう」で行くのかなと思っていたら、3曲目のペットとピアノのデュオでひとまず落ち着きます。何だ残念だなと思いながらも(続きは8曲目の”Watermelon Man”)、そんなことより、演奏は楽しさ満載。ペットのJose Maria Farràsは初めて聴くと思うのですが、音が前に出ていることが何よりで、まずは鳴らないといけないペットが鳴っている。ジャケットの「行けっ!」ていった感じがわかります。もうスペインを代表するジャズ・ピアニストの1人と言っていいIgnasi Terrazaは、ここでも厳然たる存在感を聴かせています。じっくりと時間がとれている” Autumn Leaves”では堂々としたソロを聴かせ、ボッサ・ビートの曲では爽快なタッチを、最後ではジャズ・クラシックなタッチと、ヴァーサタイルなピアノを披露してくれます。アルトのJesse Davisが2曲だけですが参加しています。印象として、最近あまりリーダー作とか見かけないような気がします。今回のDylan Cramerとはまた違い、うねりすぎないフレーズの強い音のアルトが好きなのですけど、サイドでしか聴けないのは残念なことです。


BLUES FOR BROTHER RAY / JIM ROTONDI (POSITONE: PR8045) 2009

Players: Jim Rotondi(tp), Eric Alexander(ts), Peter Bernstein(g), Mike LeDonne(org), Joe Farnsworth(dr),
Tunes: What’d I Say, Baby It’s Cold Outside, Brother Ray, Cry Me a River, One Mint Julep, Makin’ Whoopee, Lonely Avenue, Georgia on My Mind,

思えばEric Alexanderを知ったときからCharles Earlandでの同僚であるJim Rotondiをも必然的に知ることになるのですが、もしかしたらエリックさんよりずっとジムさんの味方であり続けていたような気がしないでもありません。エリックさんは時折色気を見せたりもするのですが、ジムさんは基本路線を邁進し続けてくれているからでしょうか。個人的には、エリックさんにしても彼の名義盤よりはSAVANTHIGH NOTEのサイドメンバーのナンバーを聴いていることの方が多いかもしれません。特にCharles Earlandあたりの演奏ではボスの前でも緊張することなどなく安心しきっているのか、リラックスした実に楽しそうな、もちろんファンキーな演奏を聴かせてくれました。今回はこうした意味で堪らないCDになっています。いや気持ち良い。タイトル通りのR&Bベクトルで、ファンキーさ満載とまではいえなくとも、それに溢れています。ここでは、最近オルガンを弾くことも稀ではなくなったMike LeDonneがふたりのボス役を担っていると言えます。ソロやバックのフレーズ、レスポンスにしてもアイデアが良い。ただ、悪い意味ではもちろんありませんが、ややオルガンが端整かもしれず、ちょっとぐらいオルガンが破綻している方が(これはギターとドラムにも言えるのですが)フロントのふたりにはピタッと来るのではと思います。サトルで上手すぎるという難癖をつけていますが、ここ1ヶ月、車でもよく聴いて楽しんでいるそんなCD


ALTO / DYLAN CRAMER (CASA: 1413) 2009

Players: Dylan Cramer(as), Ron Johnston(p), René Worst(b), John Nolan(dr),
Tunes: Sweet Summer Breeze, Body Heat, Mighty Low, Send One Your Love, Django, Samba Pa Ti, Midnight Mellow, Maputo, La Playa,

アルトの音色自体には、師事したSonny Crissほどには無邪気な陰翳はなく、むしろアッケラカンとした明るさの方が勝っているDylan Cramerの新作。いかにもアルトといった、こういう演奏スタイルの奏者は好きです。同い年だし、関係ないか。そうそう、音色的にはもしかしたら、Marshal Royalの方が近いかもしれない。少なくともここ十年ほどはおおよそこの録音メンバーで活動しているようで、唯一の難点は、どう聴いてもベースがエレキであることで、んどうしたものか。とはいえ、師匠同様、唄ものの選曲がお楽しみで、それも結構時代をさかのぼる楽曲が出てきたり、映画の挿入曲、サンタナの超有名曲が登場したりします。1曲目は1930年代、2曲目と最後は映画、6曲目はサンタナ、4曲目はStevie Wonderなど幅広い選曲がなされています。特に映画の選曲は渋い。2曲目は往年のフィルム・ノワールを彷彿とさせるいわゆる「ファム・ファタールもの」の佳作『白いドレスの女』から。最後が、これがまた渋く、日本人ぐらいしか知らないのではないかと思われる、ギリシア映画『夜霧のしのび逢い』のテーマ曲。女性のセミヌード・ジャケットで「夜と映画と音楽と」みたいなタイトルのLPにギター演奏で入っていそうな、言ってみればムード歌謡に近い。次回は「モア」とか「ブーベの恋人」あたりは如何でしょうか。アップテンポの曲よりはミディアム以下の曲で圧倒的な魅力を発揮すると思われるので。どう聴こうが、クロスオーバー的匂いもしないではないのですが、そういった方向へは行くことなく、このままでいていただきたいと存じ上げます。


SOME OTHER TIME / GREG REITAN (SUNNYSIDE: SSC1201) 2009

Players: Greg Reitan(p), Jack Daro(b), Dean Koba(dr),
Tunes: All of You, Star Song, The Wayfarer, Dear Prudence, Time Remembered, Giant Steps, Northern Windows, Unquity Road, Bordeaux, Joy’s Song, Autumn, Some Other Time,

最近Dave Peckはどうしているのだろうかと思っていたら、シアトル出身のGreg ReitanによるこのCDがちょっとはその隙間を埋めて、シアトル系ピアニストは至る所に増殖中であることを知らしめることに貢献した、というかそれを教わったCD。まあ、シアトル系とは何ぞやといった定義は措いておくとして、出身はそうなのですが、大学入学以降は出身を離れ、現在はLAで活躍中のようです。さて、こうしたピアニストたちは何故に”All of You”を弾かなければいけないのか、あるいは弾くことを余儀なくされているのかなどと思っているうちに、実にチャーミングなV・ガラルディの”Star Song”が始まってしまえば、そんなことはどうでもいいことだとも決着をつけないまま身を委ねてしまい、嵌められたような気がしないではない。粒だった明朗なタッチとフレーズが心地良く、コロコロと転がる軽快なピアノの一面を聴かせながら、音一つ一つは鍵盤の重さも感じさせる。オリジナルを5曲散りばめながら、聴いた記憶があまりないビートルズの”Dear Prudence”を含め、ジャズメンのオリジナルやスタンダードを合わせて12曲で、録音の良さと聴きやすさで飽きることはありませんでした。ベースとドラムも、リーダーのピアノの世界を形作るのに多大な貢献をしていて、素晴らしい演奏をしている。



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